東海大学観光学部観光学科 田中伸彦ゼミ

2012年4月 田中ゼミがスタートしました。 2013年3月にホームページをアップしました。

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「観光学」を学ぶ人のための「パーク論」(その6) 日本の国立公園 に関連する制度

「観光学」を学ぶ人のための「パーク論」(その6) 日本の国立公園 に関連する制度

国立公園の管理に携わろうとすれば、自然公園法に規定された主立った制度や自然公園法に定められているわけではないが自然公園と深く関わる様々な制度を覚えておく必要がある。

今回は、それらの制度をまとめて紹介する。実際のところ、国立公園の管理は、ただし全地域に隠遁して人と関わらない自適な生活をしていれば良いわけではない。産業界との交渉、利害関係の調整、啓蒙や教育様々な業務が待ち受けている。日本では顕著ではないが密猟者との命がけの戦があったり、暴動に巻き込まれたりすることもある。その点については「ガラパゴス」の事例で、講義ではビデオをみて学んでもらうことにする。

以下には、前段の制度についての概説を行う。

【その1:自然公園制度の中で覚えておいてほしい事項】

海域公園(旧:海中公園):1970年、国立/国定公園内の海域の景観を維持するため、公園計画に基づいて、その区域の海域内に設けられた地区。自然公園法により指定・管理。従来の名称は海中公園。2010年4月の改正自然公園法の施行で変更。国立公園等の海域内においても、利用調整地区を指定可能。2009年(平成21年)11月現在、日本国内では82の地区が指定され、指定に関係している公園は25箇所に上り、また総面積は4,056.9ヘクタールに及ぶ。

集団施設地区:国立・国定公園の利用拠点に宿舎、野営場、園地などを総合的に整備する地区として、公園計画に基づき環境大臣が指定する地区(自然公園法第29条)。指定されると集団施設地区計画が樹立され、これに基づき各種の施設の整備が図られる。中部山岳国立公園の上高地地区、日光国立公園の湯元温泉地区などが代表的。都道府県立自然公園においては条例により指定できることになっている。ビジターセンター、エコミュージアムセンターなど。

休暇村:自然とのふれあいを目的として、国立・国定公園内に宿泊施設を中心にキャンプ場、広場、休憩所等の各種施設を総合的に整備したエリア(集団施設地区)のうち、宿舎、スキー場等の有料施設を(財)休暇村協会が整備、運営している形態のもの。1961年から環境省(当時は厚生省)が整備開始、支笏湖、岩手網張温泉など36か所が開村。なお、施設のうち、広場、歩道、駐車場、キャンプ場等の公共施設については、国・地方公共団体が「自然公園等事業」として整備。

【その2:自然公園制度ではないが深く関わっているので覚えておいてほしい事項】

長距離自然歩道:豊かな自然や歴史、文化にふれあうとともに、健全な心身の育成や自然保護に対する理解を深めることを目的として整備された長距離の自然歩道。路線計画、整備計画を環境省が樹立、関係都府県により整備。1970年の東海自然歩道(1697km)から、九州、中国、四国、首都圏、東北、中部、北陸、近畿と順次整備。2003年には全国で9番目の長距離自然歩道として、「北海道自然歩道」の路線及び整備計画(4,585km、整備期間2003~2012年)が決定。全国の長距離自然歩道の総延長は約2万6千km、全国ネットワーク化が完成。

鳥獣保護区:鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護法)に基づき、鳥獣の保護繁殖を図るために指定される区域である。国指定鳥獣保護区(国設鳥獣保護区:69区域)、都道府県指定鳥獣保護区(都道府県設鳥獣保護区)と呼ばれる。鳥獣保護区では、鳥獣の捕獲が禁止。2007年の法改正から野生鳥獣の保全事業を実施。特に重要な区域を特別保護地区に指定。特別保護地区では、建築物や工作物の設置、埋め立て・干拓及び木竹の伐採などの野生動物の生息に支障をきたすおそれのある行為について指定者の事前の許可が必要となる。

天然記念物:「文化財保護法」(1950年制定)に基づき、文部科学大臣が指定する。所管は文化庁。前身は1919年(大正8年)に公布された「史蹟名勝天然紀念物保存法」。天然記念物の位置づけは、文化財保護法で規定する6種の「文化財(有形・無形・民俗文化財、記念物、文化的景観、伝統的建造物群)」のうち、「記念物」を構成する3種の対象の一つである(他の2つは「史跡」と「名勝」)。指定対象は、動物、植物、地質鉱物及び天然保護区域。天然保護区域では、4件が特別天然記念物に指定されている。(大雪山 : 北海道、尾瀬 : 福島県・群馬県・新潟県、黒部峡谷附猿飛ならびに奥鐘山 : 富山県、上高地 : 長野県)。

世界遺産:1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて、世界遺産リストに登録された遺跡や景観そして自然など、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」(Outstanding universal value)をもつ不動産を指す。文化遺産:顕著な普遍的価値をもつ建築物や遺跡など。自然遺産:顕著な普遍的価値をもつ地形や生物、景観などをもつ地域。複合遺産:文化と自然の両方について、顕著な普遍的価値を兼ね備えるもの。他に、危機遺産、暫定リストなど。

保護林制度:原生的な森林生態系からなる自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存、施業及び管理技術の発展等を目的。区域を定め、禁伐等の管理経営を行い、保護を図る森林で、国有林野独自の制度。国有林野事業では、学術の研究、貴重な動植物の保護、風致の維持等を目的とする国有林野独自の制度として、自然公園法の前身である国立公園法(昭和6年)や、文化財保護法の前身である史跡名勝天然記念物法(大正8年)の制定に先駆け、大正4年に保護林制度を発足させて以来、その保護に努めてきた。

森林生態系保護地域:国有林野事業で行われている保護林制度のひとつ。1991年の制度改正により設けられたもの。指定の基準は、(1)日本の主要な森林帯を代表する原生的天然林の区域で、原則として1,000ha以上の規模のもの、(2)その区域でしか見られない特徴を持つ希少な原生的天然林の区域で、原則として500ha以上の規模のもの。現在29箇所、約65万haが指定。ユネスコの「人間と生物圏計画(MAB計画)」の考え方を取り入れ、コア(保存地区)、バッファー(保全利用地区)を組合わせた保護方策が採られ、保護の効果を上げている。)

レクリエーションの森:国有林の制度。それぞれの森林の特徴や利用の目的に応じて、自然休養林、風景林、自然観察教育林、風致探勝林、森林スポーツ林、野外スポーツ地域の6種類に区分。

自然環境保全法:国民が将来にわたって自然の恵みを受けることができるように自然環境の保全に関する基本的事項を定めた法律。環境省所管。旧環境庁の発足後、間もなく制定された(1972)が、環境基本法の制定(1993)に際して理念に関する条文の一部は同法に移行した。自然環境保全の理念や自然環境保全基礎調査など基本的事項についての規定のほか原生自然環境保全地域(5カ所)、自然環境保全地域(10カ所:15カ所を合わせても、27,224ha)、の指定や保護規制などを定めている。また、自然環境保全に関して都道府県が制定する条例に法的な根拠を与えている(都道府県自然環境保全地域。)。

原生自然環境保全地域:自然環境保全法(1972)に基づいて環境大臣が指定(法第14条)するもので、当該地域の自然環境を保全することが特に必要と認められ、人の活動によって影響を受けることなく原生状態を維持している1,000ha(島嶼にあっては300ha)以上の土地で国公有地であることが指定の要件となっている。工作物の新改増築、土地の形状変更、動植物の採取など各種行為は原則禁止となっており、日本の自然保護地域制度の中で最も厳しい保護規制が行われている(法第17条)。遠音別岳(北海道)、十勝川源流部(北海道)、南硫黄島(東京都)、大井川源流部(静岡県)、屋久島(鹿児島県)の5地域、合計5,631ヘクタールが指定されている。)

 

 

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