東海大学観光学部観光学科 田中伸彦ゼミ

2012年4月 田中ゼミがスタートしました。 2013年3月にホームページをアップしました。

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「観光学」を学ぶ人のための「ネイチャー論」(その6) 日本の海域の自然

「観光学」を学ぶ人のための「ネイチャー論」(その6) 日本の海域の自然

「日本は海洋大国である。」この事実を日本人は自覚しているようで自覚していない。

ネイチャー論をとったからには、是非この事実を自覚してほしい。

日本の国土は約38万平方キロメートル、さして大きな国ではない。世界には現在約百九十数カ国あるが、単純に国土の陸域面積だと日本は62位にすぎない。それが、領海と排他的経済水域を合わせた面積では第6位に位置づけられる(約448万平方キロメートル)。日本より大きな海を持つ国は、アメリカ・フランス・オーストラリア・ロシア・カナダの次に来る。陸域と海域を合わせた面積でも第9位(日本より上位に左記に加えてインド・ブラジル・中国が来る約486万平方キロメートル)に位置付く。日本は10指に入る面積を誇る大国なのである。

こんな海洋国に住む日本の観光学を学ぶ学生が、日本の海の自然性について十分理解しなければ宝の持ち腐れとなってしまう。もちろん今でも、日本海のカニや太平洋のカツオなどの海の幸が観光に用いられていることは知っているであろう。また小笠原や高知県のホエールウォッチング、沖縄などのダイビングやシーカヤックが有名なこと、冬の知床の流氷が観光デスティネーションになっていることも知っているだろう。夏には各地の海水浴場が賑わうことももちろん知っているであろう。このような、観光地理情報・観光資源情報は確実に覚えておいて欲しい。しかもできる限り低学年のうちに覚えてしまい、とっとと国内の旅行業務取扱管理者の資格は取得しておいてほしい。

しかし、皆さんは大学で学ぶ学生である。上記のような旅行地理の暗記だけであれば専門学校の教育で十分教えてくれることと思う。大学の学生は、日本の海の成り立ちの概要を科学的に理解するとともに、地域の海の自然性を客観的にとらえる力を身につけてほしい。

そうすれば、鎌倉市のように、由緒ある海岸の名前をネーミングライツと称して売りに出すような恥ずかしい暴挙はなくなるであろう。

さて、日本の海は広く、深いまた暖流・寒流に恵まれ、北から南までの間に流氷から珊瑚礁まで抱えている。日本は流氷の南限、珊瑚礁の北限に当たる。つまり、日本の海域には世界の海がコンパクトに詰まっているのである。ハワイのような海も、アラスカのような海もさほど緯度が広くない地域に詰まっているのである。そしてその中に3万4千種の生物がひしめいている。この種数は世界で最も豊富であるという事実が、近年の調査で明らかにされている。

そしてそれは、浅瀬から深海まで水深が豊富でしかも寒流・暖流がぶつかる太平洋という大海と、実は生態系の歴史としては新しくキュウリエソという小魚1種に支えられている日本海という2つの異なるを抱えていることも1つの要因である。太平洋の生態系、日本海の生態系を各々理解して、持続可能な形で資源を活用し、美しい海、ダイナミックな海、美味しい海を満喫できるプログラムをつくるのかが、観光関係者の腕の見せ所であろう。

【参考】

領海:国家の領域の一部で、海岸に沿って一定の幅をもつ帯状の海域。現在は原則として12海里(約22キロ)とされている。「―侵犯」(大辞泉)

排他的経済水域:沿岸国が海洋および海底下の生物・鉱物資源の探査・開発・保存・管理などに関して主権的権利をもつ水域。1982年の国連海洋法条約で、その幅は沿岸から200海里(約370キロメートル)を超えてはならないとされている。経済水域。EEZ(exclusive economic zone)。 (大辞泉)

公海:国際法上、特定国家の主権に属さず、各国が自由に使用できる海域。 (大辞泉)

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