東海大学観光学部観光学科 田中伸彦ゼミ

2012年4月 田中ゼミがスタートしました。 2013年3月にホームページをアップしました。

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「観光学」を学ぶ人のための「ネイチャー論」(その1) 観光学部生は自然論にどう身につけるべきか

「観光学」を学ぶ人のための「ネイチャー論」(その1) 観光学部生は自然論にどう身につけるべきか

観光学部の学生は自然の何を学をどこまでべば良いか? 答えるのは難しい。

大学で取得すべき単位は124単位。本学の観光学部生の大半は、自然に関係する科目は10単位も履修しないのではないだろうか。そのようなアウエイ的状況で、学生に、自然に対するを知識を覚え、自然を扱う制度を習得し、自然を愉しむセンスを磨いてもらうことは容易なことではない。

学生は、何やかんやいっても時間があるはずだから、学生時代のうちに色々なところに出かけて、たくさんの自然体験をしてほしい。デスティネーションは、何も自然地域でなくても良い、社寺巡りをしようと、スポーツに親しもうと周囲に自然環境はついて回る。立派な自然体験になるのである。秋葉原に通い詰めたって自然からは逃れられない。真夏の茹だるような暑さ、集中豪雨など、普段自然を感じさせないように創られている都市ほど、自然を感じさせる事態が起きたときは極端になりがちである。田舎に行けば田舎の自然、都市に行けば都市の自然を体験できる。学生のうちにできるだけ外に出よう。

ただし、闇雲に外に出ればいいというものではない。それではちっとも賢くならない。君たちの多くは地域の観光をマネジメントする立場に立つ可能性がある。大学生のうちに座学を通じて必要な知識を身につけなければならないのである。しかもしっかり要点を押さえた上で、効率的に学ばなければならない。

そのためには、観光学部生としての自然との向き合い方を理解しておく必要があろう。君たちは生態学者になる訳でも、冒険家になる訳でもないだろう。彼らの自然との向き合い方と観光関係者の自然への向き合い方とは異なる。本講義では、観光学部生として自然に向き合い、自然論を身につけてもらうことを目的で開講する。

もしあなたたちが自然と関係の深い職、例えばエコツアーガイドや国立公園のレンジャーなどになりたい場合には、この講義の内容だけではどうしても知識や技能が不足する。生態学者や森林学者、海洋学者や造園学者などと同じ自然に対する知識と向き合い方が要求される。その様な意向を持っている学生は、別途私の部屋を訪ねてほしい、そのためのスキルをどの様に磨けば良いか相談に乗ることはやぶさかでない。

では、観光学部の学生が自然に向き合うためのポイントは何か? 本日の時点では、1つの「取り戻してほしいこと」と、3つの「覚えておくべき大切なこと」を紹介しておきたい。

 

「取り戻してほしいこと」は「旧暦の感覚」である。この感覚は、実のところ学生の皆さんにとっては「取り戻す」ものでは既になく「新たに身につける」感覚であるかもしれない。

明治5年の12月3日、我が国は旧暦(天保歴)を捨てて、西洋の新暦(グレゴリオ暦)を採用することにした。そしてその日は明治6年1月1日となった。飛行機などの交通網、金融取引、コンピュータネットワークの管理など世界はグローバル化ているため、世界で共通した時間を使用しなければ世の中が成り立たないのは周知の事実であるので、私もこの事実に反論しようとは思わない。

ただ、その際に妙な形で新暦に合わせて生活しようとしたため、日本人の自然観が妙な形でゆがんでしまったのである。新暦と旧暦は一ヶ月ほどずれているのだから季節感がおかしくならない訳がない。草が芽生えない時期なのに「七草がゆ」を食し、一月ずれればほぼ曇るのが分かっているのに梅雨の真っ只中に「七夕」を祝うようになってしまった日本。このおかしさに気がつくために旧暦の感覚を取り戻してほしいのである。そして(矛盾するようであるが)日本の多くの人が新暦で暮らしているので、暦のずれを調整し、その人にとって充実した観光ができるようなアイデアを生み出してほしい。

自然と寄り添って暮らしていた旧暦。その感覚が乏しい人が観光業界についた場合、本人も観光客も悲劇である。

 

3つの「覚えておくべき大切なこと」とは、

1.自然は訪れるに値する

2.自然は保全する必要がある

3.自然は恐ろしい

の3点である。

この3点については後に各々解説していきたいと思っている。この3点に留意できれば、観光関係者として、生態学者や農林水産関係者の人たちとうまく組んで地域のマネジメントができるはずである。

 

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