東海大学観光学部観光学科 田中伸彦ゼミ

2012年4月 田中ゼミがスタートしました。 2013年3月にホームページをアップしました。

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「観光学」を学ぶ人のための「パーク論」(その4) 世界の国立公園

「観光学」を学ぶ人のための「パーク論」(その4) 世界の国立公園

世界最初の国立公園は、アメリカのイエローストーン国立公園である。今からおおよそ130年前、1872年の出来事である。この国立公園の誕生には、秘話として以下のことが語り継がれている。

時はゴールドラッシュに沸く西部開拓の時代であった。西へ進んだ開拓民たちは、各地で牧場経営などをはじめた。法律に基づき開拓民が開墾すれば、そこは自分たちの所有地になった。
そのような時代の最中、1870年にHenry D. Washburnらの探検隊は、イエローストーンの間欠泉や雄大な滝などの大自然に目を奪われた。
その夜、キャンプの焚き火を囲みながら、隊員たちは昼間見た景色の感動に酔いしれた。
その時、隊員のひとり、Cornelius Hedgesが、この大自然を個人の所有のもとで開拓し、荒らすのではなく、後世に伝えて公共の福祉に供するべきだと熱く語った。
この夜の熱い議論が、世界で最初の国立公園、1872年のイエローストーン国立公園の誕生を生んだのである。

以降、国立公園の概念は全世界に広まった。
日本でも1931(昭和6)年に国立公園法が制定され、戦後自然公園法に受け継がれ、今では北海道から沖縄まで、全国に30の国立公園を有するまでになっている。
ただし日本の国立公園は、アメリカのように営造物制ではなく地域制公園で、管理の仕組みや保全も目的も必ずしもアメリカとは同一ではない。

世界各国に国立公園(national park)があるが、必ずしもその概念や管理の方法が同一であるわけではない。同じ言葉が別の概念で使われていては何が何だか分からなくなる。
そのためIUCNなどが音頭を取り、10年に一度をめどに世界国立公園会議というものが開催されている。この会議は、第1回目が1962年にシアトル(米国)で開催されており、直近では2003年にダーバン(南アフリカ)で第5回会議が開催された(次回は2014年開催予定)。
第5回会議の成果は、『地球の保護地域2003(Planet’s list of Protected Areas 2003)』として刊行されるとともに、World Database on Protected AreasとしてWEB上で公開もされている。

IUCNのカテゴリーは、6つのカテゴリーに分けられている。ただし、カテゴリー1は「1a」と「1b」に分けられているので実質的には7つのカテゴリーと行って差し支えない。それらは下記のとおりである。

カテゴリー1a 厳正保護地域 Strict Nature Reserve:主として学術的な目的のために管理

カテゴリー1b 厳正保護地域 Wilderness Area:主として原始性の保護のために管理

カテゴリー2 国立公園 National Park:主として生態系保護とレクリエーションのために管理

カテゴリー3 天然記念物 Natural Monument or Feature:主として特異な自然物を保全

カテゴリー4 首都生息地管理地域 Habitat/Species Management Area:主として管理介入と通じて保全

カテゴリー5 景観保護地域 Protected Landscape/Seascape:主として陸域・海域景観の保全とレクリエーションのために管理

カテゴリー6 資源保護地域 Protected Area with sustainable use of natural resources:主として自然生態系の持続可能な利用のために管理

そして、日本の国立公園の多くはカテゴリー2ではなくカテゴリー5に区分されている。そしてカテゴリー2には、「森林生態系保護地域」や「国設特別鳥獣保護区」など、他の法律や規程による保護地域がエントリーされている。日本の国立公園は必ずしもIUCNの国立公園と同値ではないのである。

2014年の世界国立公園会議でこれらカテゴリーがどう修正されていくのかは来年を待つしかないが、今はこの様に世界の国立公園と日本の国立公園との微妙な違いを覚えておいてほしい。

 

 

 

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